ウィンストン・チャーチル生誕150周年~眼鏡越しに見る彼の人生と文化~
多くの偉人を輩出したイギリスにおいて、国民によって投票された「100名の最も偉大な英国人」No.1に選ばれた人物こそ、ウィンストン・チャーチルです。英国の首相として、また作家や画家など文化人としても多才な活躍を見せた人物として有名です。
本記事では今年で生誕150周年を迎えた彼の人生を象徴するアイテムの一つである「C.W. Dixey & Son」の眼鏡に焦点を当てて、彼の趣味や文化面を掘り下げていきたいと思います。
1.〈C.W. Dixey & Son〉とチャーチル
〈C.W. Dixey & Son〉は英国最古の眼鏡ブランドで、創業は1777年。英国王室や著名人に愛用されてきたブランドです。チャーチルは、特注でオーダーした丸眼鏡〈CHARTWELL01〉を愛用し、そのデザインは彼の知的で品格あるイメージを形成する一助となったと言っても過言ではありません。
チャーチルは〈C.W. Dixey & Son〉に眼鏡の作成を依頼する際にテンプルのエンドにドットを2つ打ったデザインを入れ、彼の個性が反映された眼鏡のディテールが今日の〈C.W. Dixey & Son〉のフレームのアイコンにもなっています。
読書家としても有名なチャーチルは大量の書籍を読み漁ったり、絵画を趣味としていたため、眼鏡を通して読書や芸術活動に勤しんでいたことを想像するととても感慨深いです。彼にとって〈C.W. Dixey & Son〉の眼鏡は読書や執筆などの芸術活動において不可欠なツールだったということは恐らく間違いでしょう。
2.チャーチルの文化的背景
ではチャーチルは何故文化面でも多彩な一面を持つことができたのかについて考察していきたいと思います。
ウィンストン・チャーチルは、1874年に生まれ、1940年代に全盛期を迎えました。この時代は、ヴィクトリア時代(1837–1901)の伝統的価値観から、急速に変化する20世紀のモダニズムへの移行期に該当します。彼の生きた時代背景を理解することで、彼の趣味や嗜好、そして文化的感性がより立体的に見えてきます。
彼が過ごした青年期のヴィクトリア時代は、貴族や上流階級が中心となり、身分に応じた振る舞いや装いが求められた厳格な階級社会でした。チャーチル自身も貴族階級(マールバラ公爵家の家系)出身であり、これらの価値観に深く影響を受けています。
ヴィクトリア時代は古典主義的な美学や伝統的なファッション、装飾品が評価される伝統の重視の時代でした。チャーチルの眼鏡やスーツ、懐中時計といった愛用品は、こうした価値観を反映していると言われています。
またヴィクトリア時代は、努力や勤勉さなど、精神的な面においても実直な生き方を重視されていました。チャーチルはこの価値観を受け継ぎつつも、この先モダニズムの時代に入り自分らしい自由な発想も融合させるようになります。
20世紀に入ると、産業革命の更なる進展や二度の世界大戦を経て、モダニズムという概念が台頭しました。この時代は階級や伝統からの脱却を図り、個人の自由や表現が重要視されるようになりました。また建築やデザイン、ファッションの分野では煌びやかな装飾性を排し、機能美を追求する動きが強まりました。
チャーチルは古典的な価値観を持ちながらも、画家としての創作活動や自由な発想でこのモダニズムに応えていきました。彼がオーダーした〈CHARTWELL01〉もヴィクトリア時代の職人技術を引き継ぎながら、彼の個性に合わせて隠れた位置に施されたテンプルエンドの2点のドットは煌びやかな装飾性を排除する傾向にあるモダニズムに応じており、「英国の文化的な変遷」感じられるデザインという風に捉えることもできるかもしれません。
3.今日の視点で見る〈C.W. Dixey & Son〉
現代において〈C.W. Dixey & Son〉は、チャーチルが愛用したデザインを基にした〈CHARTWELL01〉を今でも世に送り出しています。これは過去の名作の体現に留まらず、彼が培った世界観や価値観という「目に見えない精神」を現代へと継承する架け橋とも言えるでしょう。当時の職人技術とモダンな感性が融合されたこの眼鏡は、個人が物を大切に扱い、自らの個性を反映したアイテムを選ぶ意義を改めて問いかけてくれます。
今日、多くのものが大量生産され、消費されていく社会では、愛用する道具に込める思いは希薄になりがちです。しかし、チャーチルの例が示すように、歴史あるブランドの逸品を長く愛し続けることは、自分自身の価値観を体現する行為であり、流行に流されない確固たるスタイルを築くことにもつながります。
彼の生誕150周年という節目に、この眼鏡を手にすることは、彼の精神を今に生かし、私たちが「何を選び、何を身につけるのか」を考えるきっかけになり得るでしょう。
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C.W. Dixey & Son|シー ダブリュー ディキシー アンド サン
Text:Junichi Tashiro
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