伝えたいことを眼鏡で表現するkearny | カーニー
kearny | カーニーの新作が発売されました。
今回の新作は、「nupuri」と「uhuy」のサーモント型の2モデルで、日本の「山」から着想を得ました。モデル名は、アイヌ語の「nupuri」=「山」、「uhuy」=「燃える」を由来としています。
国内9番目のカルデラ湖、北海道の洞爺湖。東西11km、南北9kmの円形に近い湖です。
その真ん中に浮かぶ4つの島を総称して中島と呼ばれています。
洞爺湖は、約11.4万年前に洞爺火砕流を噴出した噴火が起こり、洞爺カルデラが形成されました。中島は、約5万年前の火山噴火で生じた溶岩ドームと火砕丘の集まりです。上の写真のモデル「nupuri」は、その中島の1つの島からヒントをもらって誕生しました。
一方、「uhuy」は、火の国、熊本県のシンボルの阿蘇山からヒントを得ています。阿蘇山は、世界でも有数のカルデラと雄大な外輪山を持っています。外輪山は南北25km、東西18kmで、広大なカルデラ地形です。
阿蘇のカルデラは、30万年前から9万年前に発生した4回の巨大噴火で形成されました。世界的にも珍しく、カルデル内に集落が作られ、国道や鉄道まで敷かれています。
kearnyのデザイナー、熊谷 富士喜さんのご自宅の近くの等々力渓谷をうちのスタッフたちと一緒に散歩しながら、眼鏡のデザインがどこから生まれて来るのかなど、いろいろとお話をお伺いしてみました。
kearnyといえば、アメリカのサンフランシスコをベースにしてデザインが生まれてましたが、日本の「山」というのは意外でした。
ブランドの立ち上げた2013年から、2ヶ月に一度のペースでアメリカに行き、1回に2週間は滞在していたという熊谷さんですが、2017年くらいから考えが変わったそうです。
アメリカに行ってしまうと日本にいる時間が限られてしまう。そもそもブランドを立ち上げたのは、もともと海外への憧れが強かったが、逆に海外から客観的に日本を見たら素晴らしいところが沢山あり、灯台もと暗しだったことに気が付いたのがきっかけでした。
2年前から熊谷さんは、日本中を旅して回り、各地を訪れる度に自然から何か尊いものをもらい、日本の素晴らしさをあらためて見つめ直しました。
熊谷さんは、ちょうどその頃に日本の民芸にはまっていたそうです。
1926年(大正15年)に柳宗悦や河井寛次郎らによって提唱されて始まった民芸運動ですが、当時の眼鏡の作り方が、鯨の毛を使って蝶番を作ったり、亀の甲羅を材料にしたり、自然のものを使ってもの作りをする点で民芸に近かかったのでないかと考えていました。
しかし、なぜ眼鏡が民芸運動に全く交わらずに来たのかということに興味が湧いて来たそうです。
その時は、そこから眼鏡と民芸運動の接点を模索し、自身の眼鏡づくりで表現してみようと思ったそうです。
河井寛次郎がかける眼鏡を想像し、京都の河井寛次郎の住まい兼仕事場に行き、数時間も座り込んで、河井寛次郎はどのような生活をしていたか思い浮かべることで、実際に眼鏡のデザインを描いて、製品にしたこともあるそうです。
熊谷さんが、等々力渓谷でお気に入りの場所は、上には交通量の多い環状八号線が通る玉沢橋の下のあたりです。
人工的なものと自然が交差し、両方が一度に楽しめる場所です。
石の上に座って考えごとをすることも多いそうです。
川の水面にカメラを向けシャッターを切る熊谷さん。
しばしばカメラを持ち歩くという熊谷さんは、水面に反射して映る四季折々の等々力渓谷の風景などを撮影することも多いでそうです。こうして日常の中で自然と向き合っている時に、kearny の眼鏡のデザインが少しづつゆっくりと始まって行くのかもしれません。
自然からヒントをもらうという熊谷さんですが、自然の中にある形を直接取り入れるという訳ではなく、感覚的に全体像を頭の中に取り入れて、それが熊谷さんのフィルターを通して、kearny の眼鏡にどこかの要素として組み込まれて行きます。
もしくは、熊谷さんの頭の中で、常に感覚的に無意識に何かを探していて、その何かと自然の中の要素と合致したものが見つかって、しだいにkearny の眼鏡として膨らんで行くのかもしれません。
以下の2枚は、熊谷さんがこの日撮った写真です。
熊谷 富士喜さん撮影(1/2)
川の水面に反射して光と渓谷の景色が映し出されています。
熊谷 富士喜さん撮影(2/2)
渓谷を流れる川を囲む緑の一面の草木の中に、ゴルフ橋の真っ赤な橋桁が垣間見えます。(*上記の2枚の写真は、熊谷 富士喜さんが撮影。)
ご自身のことを「感覚的な人間」だと言われる熊谷さんですが、感性が豊かでとても探究心が強い方だとあらためて感じました。1つのことが気になり出したら、もっと知りたくて止まらないそうです。
今回の新作の名前が、アイヌ語になっています。昨今、アイヌ民族の伝統的な文化が再評価されています。アイヌもまた自然界へ対する畏敬の念を深く持った民族です。
アイヌでは、自然界の様々なものはカムイ(神)の化身とされ、それらは神が姿かたちを変えて人間界へやってきた仮の姿だと信じられて来ました。
今回の新作は、熊谷さんがアイヌのなんらかの魅力に強く惹きつけられたのは間違いありません。
新作の「nupuri」は、優しくなだらかな丸いカーブが特徴。もう一つの新作「uhuy」は、ラインに荒々しい力強さがあるのが特徴。熊谷さんが、自分で実際に見て来た体験を眼鏡のデザインとして表現されているのです。
kearny | カーニー
PRODUCT NAME: nupri
COLOR: black
PRICE: 35,640yen(w/tax)
kearny | カーニー
PRODUCT NAME: uhuy
COLOR: black
PRICE: 35,640yen(w/tax)
kearnyの眼鏡のデザインの魅力は、熊谷さんの「伝えたいこと」が眼鏡の中にいつもあることに尽きます。
言語化出来ない伝えたいことを、受け手が感覚で感じとるように眼鏡のデザインに落とし込んで、美しさを表現しているのです。
kearny は、熊谷さんが実際に何を見て来て、何を伝えたいのかを知りたくなる眼鏡です。
きっと熊谷さんは、終わりのない旅をこれからもずっと続け、ぼくらに何かをずっと伝え続けてくれるはずです。
以前にも熊谷さんにお話をおうかがいしましたので、そちらも合わせてご覧ください。
思わず掛けたくなる親密感、kearnyの眼鏡づくりとは? 前編
http://blinc.co.jp/blincvase/archives/7451
思わず掛けたくなる親密感、kearnyの眼鏡づくりとは? 後編
http://blinc.co.jp/blincvase/archives/7460
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