時代が生み出した名品。日本を代表するウェリントンモデルが色褪せない理由。
長年に渡って受け継がれている眼鏡のデザインからはその当時の歴史的な背景も読み取れます。
1960年(昭和35年)代に作られ、20年以上に渡りロングセラーとなった日本を代表するウェリントン型である NTS | エヌ ティー エス 「NO.3」は、今見ても良いものであることは実感できるのですがなぜそんなにも色褪せないデザインとなったのでしょうか。もっと以前の眼鏡のデザインの歴史から振り返り関係性を探っていきます。
NTS | エヌ ティー エス No.3
まずメタルフレームの眼鏡が主流だった1920年代、形が均一で製造しやすい「ラウンド型」が多く普及していました。
その後、視界を広く取るためにツルの位置が上部に移動し、レンズの形は逆三角を丸くしたような「ボストン型」が誕生し画期的なデザインとして世界的に広まりました。この頃多くの眼鏡製造を担っていたのはアメリカの会社でした。
これまで道具としての機能性を求めた眼鏡のデザインデザインが大きく変化したのは1950年代のようです。
プラスチック素材の普及と相まって眼鏡のデザインの幅も広がり、メタルフレームよりも主張が出るセル(プラスチック)フレームは、個人の印象を強めたり変化させるアイテムとしてファッション的な要素が高まります。
50年代当時のアメリカで大衆文化の中心であったブラウン管のテレビの中でも太い黒縁をかける著名人たちの姿は一際目立つ憧れの存在であったようです。
フレームが太くインパクトがある逆台形の「ウェリントン型」。
メタルフレームの上部に眉毛のようなプラスチックのパーツをつけた「サーモント(ブロウ)型」。
この2型は70年以上もたった現代でも多くの人に親しまれている形です。
いずれも目元を強調し威厳や勢いのある印象を与えるもので、まるでアメリカの急速な経済発展の時代背景を象徴するような力強いデザインです。
そして1955年(昭和30年)頃の日本ではアメリカナイズされたファッションや生活様式が広まり、アメリカへの憧れが高まります。そして後を追うように日本でも「ウェリントン型」のブームがやってきます。
1932年創業の老舗眼鏡工場であるサンオプチカルは1960年代にオリジナルブランドNTSを立ち上げ、ウェリントン型の「No.3」を発売しました。
「No.3」はいわゆる「ウェリントン型」から大きくアレンジを効かせることなく、美しい逆台形を守り正統派のかっちりとした印象で、日本のビジネスマンたちに好まれるデザインでした。
また四角く幅のあるデザインからどんな顔型にも合いやすく老若男女問わず好まれ広がっていきました。
ポイントは幅広くとった智元(蝶番部分)の重厚さとやや上向きのシルエットです。ここが目元をはっきりとさせ、普段とは少し違った印象に見せてくれる大きな要素です。
「ツートン」と呼ばれる上下で切り替えた色合いは現代の感覚ではクラシックの象徴するような色合いですが、その当時では最新のデザインであった「サーモント型」に近い要素があり、洗練された印象で1番の人気の色だったとうエピソードもあります。
当時と同じ希少なセルロイド製で忠実に復刻したNTSの「NO.3」。固くしっかりとした素材のセルロイドは磨きに時間をかけるため、角の取れた丸みのある仕上がりが特徴です。美しい艶感があり、端正で優美な印象を作り出します。
海外の洗練された眼鏡をデザインソースとし、日本人ならではの解釈を通して耐久性とデザイン性のバランスを追求した「No.3」は唯一無二の存在です。
日本が世界のもの作りを牽引していた時代に生まれた「No.3」からは確かな品質と自信が溢れているようで、その情熱は色褪せることなく現在でも眼鏡を通して感じる事が出来ます。
NTS |エヌ ティー エス
PRODUCT NAME : No.3(ナンバーサン)
COLOR : クロ、クロII、
PRICE : ¥38,500(w/tax)
text: Nagao Mai
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