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【kearny】kearny 2026 SS「konide」NEW COLLECTION ORDER FAIR 熊谷富士喜氏インタビュー

12月19日(金)より開催される【kearny 2026 SS「konide」NEW COLLECTION ORDER FAIR】では、前回に続き“成層火山”をテーマにした「konide」シリーズの第2弾が登場します。
セルロイドで制作されたkonide1〜3に続き、今回はアセテートやチタンなど異素材を用いたkonide4〜8の全5型が新作としてラインナップ。
前作とはまた違う仕上がりを見せながら、“konideらしさ”はしっかりと受け継がれているコレクションです。

今回、その新作についてデザイナーの熊谷富士喜さんにお話を伺いました。

konideシリーズ第一弾に関するブログはこちらから↓

https://blinc.co.jp/blogs/blinc-vase/kearny-konide-interview


■第2弾となる「konide 4〜8」は、1〜3と比べてどのような特徴がありますか?

熊谷:前回のkonide1〜3はセルロイドで作りましたが、セルロイドは素材としての制約が多いんです。本当はもっとこうしたいのに、できない部分もあって。kearnyといえばセルロイドという印象もありますが、「konide」というテーマ自体はもっと自由に表現したい気持ちがありました。

シリーズとして続けていくうちに、「これもっとやりたいな」と感じるようになって。ビジネス的には別シリーズにした方が良いのかもしれないけど、自分が“続けたい”と思えたので、だったら縛りを外してみようと。

そこで、これまで分けていた「kearnyのコレクション」「acekearnyのコレクション」という分けた境界もなくして、konideの中で自由に素材を扱うことにしました。結果、konide4・5はメタルとアセテートのコンビ、konide6〜8はメタルへと展開が広がりました。

熊谷:今回メタルのブリッジを作ったときは「ちょっとやりすぎたかな」と思ったんですが、ブリッジは目立つ場所なので柔らかく見えるよう調整しました。その分、ヨロイで山の要素を入れるなど“足し算”するところもありますが、リムやテンプルに柄は入れないなど“引き算”も行っています。

田代:確かに展示会で見させていただいたとき、パーツの個性はしっかりあるのに、全体のバランスはプレーンな印象がありましたね。
デザイン過多にならないギリギリのところで止めている感じがして、作り手としての葛藤も見えるというか。良い意味で“民藝っぽさ”も感じました。

熊谷:そういう風に見えていたら嬉しいです。足し引きのバランスはかなり考えましたね。


■素材(セルロイド・アセテート・チタン・ベータチタン)を扱う上で、どう棲み分けていますか?

熊谷:素材ごとに特徴があるので、まず「やりたい形に対して何が合うか」を考えます。今回はテンプルをベータチタンにするか、サンプラチナにするかなども検討しました。軽ければ良いというわけではなく、重心や掛け心地の安定感も大切なので、最終的にピュアチタンにしました。

ベータチタンはすごい素材なんですけど、度付きレンズを入れると前後バランスが崩れやすいんですよね。それに気づけたのは、直営店「sost」を始めたことで、実際にお客様がどう使うかを見られるようになったからです。

田代:デザイナーが“現場の掛けられ方”を把握できるのは大きいですよね。直営店がない方だと、自分の眼鏡がどういう状況で使われているか把握しづらいですし。

熊谷:本当は知りすぎることに不安もあったんですよ。制限が増えるとデザインの自由度が下がる気がして。でも、知ったことでより多くの人が掛け心地よく感じられる眼鏡を作れるようになりました。

田代:今回の新作、どれもファーストフィットの良さが抜群でした。ヨロイからテンプルへの流れの丸みもあって、硬さより“ホールド感”が印象に残りました。

熊谷:今回の製作は丹羽正彦さんなんですが、丹羽さんのお父様の眼鏡が好きで、あの包み込むような作りが今回も活きています。テンプル芯をベータチタンにしてセルモダンの中でバネ性を出す「グラベル」の構造もそうですが、作り手の特徴を理解してデザインするのは大事です。それが“民藝っぽい”と言われる部分なのかもしれません。

田代:精神論ではなく、ちゃんと作り手とのリアルな関係性が形に現れている感じがあります。


■ kearny や acekearny を通して、お客様にどんな価値を届けたいですか?

熊谷:自分は眼鏡と出会って人生が変わったので、その楽しさを伝えたいです。ファッションの世界にいた頃は自分の居場所に迷っていた時期もありましたが、眼鏡で「これが一番楽しい」と思えました。

眼鏡は本当は楽しいのに、世間的にはネガティブなイメージもまだまだある。そこを変えたいです。

実は絵本を作りたいとも考えています。
子どもって“めがねくん”みたいに呼ばれたり、早いうちに偏見が生まれがちで…。大人になっても老眼がネガティブに捉えられたりしますよね。でも本来は「眼鏡を楽しめる準備が整った」と思ってもらいたい。

田代:眼鏡=ネガティブの始まりって、たしかに幼少期ですよね。
そこを変えられるのはすごく意義があると思います。

熊谷:映画や映像も作りたいですが、まずは自分ができることから少しずつですね。

田代:熊谷さんって、もはや“眼鏡デザイナー”にとどまらないですよね。コーヒーショップを作ったり、絵本を構想していたり、眼鏡へ辿り着く導線を広げている感じがあって。活動家に近い印象さえあります。

熊谷:売れるコンセプトを狙うとkearnyっぽくないんです。「流行ってるからやろう」と言われたらもうやりたくない(笑)。でも、自分の人生がそのまま眼鏡の背景になるのは自然なことなんだと思います。


■ kearny の中で「konide」シリーズはどんな位置づけになってきていますか?

熊谷:「集大成」とかいうと終わりみたいに聞こえるので言いにくいんですが(笑)。
セルロイドで8年やり、使えなくなったタイミングで「gravel」シリーズが生まれ、「acekearny」が生まれ、この10年以上の経験をすべてまとめて表現できているシリーズだと思います。

セルロイドもアセテートもメタルも扱えるし、それらを一つのテーマで自然につなげられる。自分が一番楽しめているシリーズでもあります。

田代:konideって“2シーズンくらいで終わるシリーズ”だと思っていたので、まだ続くのは嬉しい驚きでした。

熊谷:今回でkonideは8型まで作りましたが、またセルロイドでやりたい気持ちもあるんですよ。一周回って戻ってきた感じ。またかと思われるかもしれませんが(笑)。でも、楽しいならそれでいいじゃないかと。

田代:“楽しさ”が判断軸にあるところがkearnyらしいですよね。

熊谷:垣根を越えて「一つのkonide」として考えられるのは、今まで積み重ねてきた経験があるからだと思っています。


Text:Junichi Tashiro


【kearny 2026 SS「konide」 NEW COLLECTION ORDER FAIR】

期間:2025年12月19日(金)〜 12月28日(日)

熊谷氏在店日 :12月20日(土)13:00 〜 18:00 予定

場所:blinc vase(表参道)

営業時間:12:00〜20:00

期間中の定休日:12月22日(月)


【ABOUT BRAND】

kearny|カーニー

職人の手で磨かれるセルロイド製の眼鏡を筆頭に、洋服とバランスよくコーディネートできるアイウェア kearny。

デザイナーの熊谷富士喜(くまがい・ふじき)氏は、眼鏡にとどまらずコーヒーやアパレルなど幅広いカルチャーに関わり、東京・祐天寺で古着と雑貨、セレクトアイテムを提案するショップを経営しています。リピーターの多い、注目のドメスティックブランドです。