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kearnyデザイナー熊谷富士喜氏インタビュー -11年目の初心と変化- 前編

2024年2月2日(金)よりkearny/acekearnyの新作コレクションを中心にアーカイブ作品も揃えたフェアを開催いたします。全6型からなる新作は一新したオリジナルパーツによって構成されており、kearnyらしさもありつつ、10周年を超えて更に深みのあるモデルがラインナップされております。

今回はフェアに際して、デザイナーの熊谷富士喜さんにkearnyの2024SSの新作やルックについてお話を伺ってみました。以下会話形式にてお届け致します。

 

 田代:今回もやって参りましたね。フェア恒例のインタビュー、今回も色々お話しを是非聞かせてください。

 

熊谷:今回も来ましたね〜。いつも本当に有難いです。宜しくお願いします。

 

田代:では早速ですが、読者の方に新作のテーマを伝えるとしたら。どのようにお話ししますか。

 

熊谷:今回のコレクションは「変化」というものを意識しました。丁度今回の2024SSの発売がkearnyの11年目のスタートで、10周年を経て、今後どうしていきたいかっていうのを自分なりに考えた時に、変化はさせたいものの、変化をさせすぎると、kearnyらしくなくなってしまう可能性もあるので、築き上げてきたkearnyを活かしながら、どう変化させるかを、自分なりに考えた結果が、今回のコレクション表れていると思っています。

 

田代:確かにkearnyらしさも感じられつつ、新しさも感じますよね。具体的にどのようなところで変化を意識しましたか?

 

熊谷:まず製法というところでは、工場や生地を変えましたね。あと今回は初めてシートメタルという素材を採用しましたね。

 

田代:blossomとpaulですよね。

 

熊谷:そうですね。シートメタルは普通にメタルフレーム作るよりコストがかかるので、僕が10年間でやらなかったっていうよりかは、やれなかったと言う方が正しくて、今まで10年間で、しっかりブランド認知だったりとか、広まってきたおかげで、会社的にも作れる体力が多少 ついたのかなっていうのも、11年目からどうやって物作りしていくかっていう中で一発目としてシートメタルをやりたいと思っていましたので、物になって良かったと思っております。

 

熊谷:あと今回は”元々kearnyで作っていたモデルを違うアプローチで作り直す”っていうのが、「変化」と同じぐらいのテーマとしていて。例えば新作blossomは元々dearieがベースになっていて、paulはdesmondがベースになっているんです。

 

田代:元々セルフレームだったモデルをシートメタルで作ったということですね。あとこのシートメタル結構厚みと太さがありますよね。


熊谷:そうなんです、シートメタルで出せる最大限の厚みにしました。なぜ厚く、かつ太さも出したかというと、dearieやdesmondは太さや厚みのあるセルフレームなので、メタルでセルフレームっぽさをどうやったら出せるのかということを意識しました。厚みや太さが出せても、掛けた時に重たくなりすぎないのかとか、そういうことも工場の方と話し合いながら、調整して作りました。

 

田代:変化をつけるために、リム線を細くして差をつけたりみたいなのもできたと思うんですけど、 でもdearieやdemondを前提にして、対にして作ってるんだなっていうことがわかるデザインですよね。

 

 

熊谷:世の中に既存モデルをリデザインさせている眼鏡ってたくさんあると思うのですが、少ししかいじらないみたいなのがあって、自分がやる時は、そういう風にはしたくないっていうのもあったので、全く違う素材にしたりとかと違うアプローチで 自分が好きな形を作り変え、さらに新しい作り方にしなきゃいけないし、だからこそ変化をさせすぎないように、自分の今まで作ったデザインから、さらにブラッシュアップさせるっていうので思いついたのが今回のこのテーマでした。

 

田代:じっくり考えられて11年目をスタートしたという感じが伝わってきますね。

 

熊谷:この10年間で色んなテーマで眼鏡を作ったり、思い出を作ってきて、本当に色々お世話になった方をお招きして10周年はライブやったりとか、10周年というものがkearnyとしても自分でも一回区切りと思っていて、その次のコレクションだから、肩の力を抜きすぎても面白くないし、力みすぎても違和感が出そうだったので、どう着地させようということはかなり悩みました。 でも悩んですごく納得してるというのができたので、悩んでよかったなと思っています。

 

田代:確かに、力を抜きすぎても力み過ぎてもってなって、結果的にここに着地したっていう熊谷さんと同じ感覚がそのまま、見て伝わってる感じがします。今までとも違うし、なんか「気合いが入りすぎじゃね。」みたいな感じでもないし、気合はもちろん入ってると思うんですけど、わざとらしい感じでもなく、なんか今までのカーニーらしさをちゃんと引き継ぎつつ、 また新しいことを始めようと表現してるのが、このデザインを見た人に心地よく伝わるぐらいの変化ですね。

 

田代:続いてtommyとkeithの2型ですが、元々はflanaganとjarrettですよね?

 

熊谷:そうですね。flanaganとjarrettもセルフレームでしたが、この2型はサーモントに変えてtommyとkeithというモデルに変化させましたが、この2型は変化というテーマに加えて初心というテーマでもありました。初心というのはkearnyを2013年にスタートしてから、一番最初に作っていただいた工場さんにもう一回改めて節目を超えた11年目にお願いしたいと思って依頼しました。その工場さんと自分が作りたいのはなんだろうなと考えた時に、 そこはサーモントを作るのがとても上手なので、tommyとkeithもサーモントデザインに変化をさせました。自分のデザインももちろんあるけど、やはりそれぞれの職人さんが得意なものを尊重しながらセッションするみたいな。

 

田代:そういうことだったんですね。不思議に思ってたんですよ。なんでこの2型だけサーモントにしたんだろうって。

 

熊谷:なんか一個一個に、自分が納得できるかとか、手に取ってもらう方に伝わるかとか、すごく意識はしながらやっているので、 全部を分けたいってのがあって。なので統一感もありますが、大きく分けて3つの作り方に分けていますね。 

 

 熊谷:tommyはベースとしたflanaganのデザインを大きくは変えていないけど、jarrettをベースにしたkeithは玉型をそのままサーモントのパーツを組み合わせるのが難しかったので、自分でも元々のjarrettのデザインとは違うなっていうのはわかっているのですが、元のデザインから触ってない線は実はいっぱいあるんです。

 

田代:そうなんすね。そのまま無理矢理サーモントにするというわけでもなく、でもちゃんと名残を感じられるようにデザインされているんですね。

 

田代:もう2型のお話に行く前に、今回一新されたパーツの話もお聞きしても良いですか?

 

熊谷:パーツも是非お話しさせてください。

 

田代:今回の新作で一新されたパーツのデザインはこのコレクションをより一層特徴的に感じさせてくれますよね。このパーツのデザインに何かテーマやコンセプトがありましたらお聞かせいただきたいです。

 

熊谷:僕が愛用していた50年代のアメリカのヴィンテージのフレームがあって、もう直せないくらい壊れちゃったんですよ。

 

田代:はい。

 

熊谷:結果的にデザインは全然違う形になったのですが、その眼鏡のパーツが今回の新しいパーツのモチーフになっています。やはり僕は古いものが好きで眼鏡好きになった人間だから、振り返った時にそういう自分が影響を受けてきた要素とかは残したいなと思いました。ただそのまま同じデザインでリプロダクトすると新しさもないので、それを元にデザインを考えるという作業に取り組みました。

 

田代:確かにヴィンテージの空気感みたいなのはありますけど、オリジナリティもありますよね。熊谷さんの根幹部分が着想になったということですね。

 

熊谷:そうですね。あくまで着想だから、元のデザインからは結構変えているけど、そのデザインをというよりは、自分の大切にしてきた感覚を落とし込んでいるイメージですね。 

 

 田代:新しいモダンも同じような着想源ですか?

 

熊谷:モダンもそうですね。50年代ぐらいの眼鏡でモダンエンド部分に膨らみを持たせるデザインがあって、 面白いなと思っていたんです。エンドに向けて緩やかに広げていくデザインが多いと思うのですが、今回のは後ろをわざとカコンってあげちゃって、後ろに重心を持たせる役割を持たせてます。

 

田代:もちろん玉型やブロウパーツもそうですけど、特にヨロイとかのパーツが今回のコレクションのアイコンになってると言っても過言ではないぐらい印象強いですよね。

 

熊谷:モデル毎にパーツのデザインも分けても良いかなと思ったのですが、個人的にすごく満足のいく仕上がりだったので、今回はこのパーツで揃えていきたいなと思いました。ただtommyとkeithのサーモントに関してはバランスを考慮してヨロイを斜めにカットした仕様にしていますので、全部そのまま使い回しているわけではないんですよね。

 

田代:この細かいところへのこだわりが妥協の無さを感じさせますね。でも金型もそれぞれ作らなきゃいけないと思うので、ブランド一年目とかだったら、なかなか成し得ないですよね、、笑

 

熊谷:このためだけにね、こだわり過ぎかもしれませんが笑。

 

田代:いや、これは今のkearnyには必要なこだわりで、今だからこそ出来ることだと思います。

 

熊谷:結構悩んだけど、サーモントで真っ直ぐ切ったヨロイを付けると、少し変な目立ち方するし、このぐらい斜めに落とした方が全体のバランスが美しかったので。

 

田代:今回の新作はこれまで以上に細部に渡るこだわりや慎重な検討を感じますし、その熊谷さんの考えがいつもに増して眼鏡を通して伝わってきます。表現が難しいですが、10周年を超えて11年目 で成熟した感じがしますね。kearnyが11年目ということは、kearnyのデザイナーとしての熊谷さんも11年目ですし。

 

熊谷:そうですね〜。

 

田代:なんかやはりこういうのってカーニーを始めた当初の熊谷さんだったら思いもつかないんじゃないですか。

 

熊谷:そもそも10年続くと思わなかった笑。続けて良かったですし、これからも期待に応えたいです。本当に有難いですね。 


田代:11年目のkearnyも早く多くの方に届けたいですね。

 

後編に続く

 

【 kearny 2024ss new collection fair 】
期間 : 2024年2月2日(金) 〜 2月18日(日)
熊谷氏在店日 : 2月17日(土) 13:00 〜 18:00 を予定しております。
開催店舗 : blinc vase
営業時間 : 12時 〜 20時
定休日 : 月曜日


【ABOUT BRAND】
kearny|カーニー
職人の手で磨かれるセルロイド製の眼鏡を筆頭に、洋服とバランスよくコーディネートできるアイウェア kearny|カーニー。
デザイナーの熊谷富士喜(くまがい・ふじき)氏は、眼鏡だけでなく幅広いカルチャーに精通し、東京・祐天寺で古着と雑貨、セレクトアイテムを身近な観点から提案するショップを経営しています。リピーターの多い、ドメスティックブランドです。


blinc vase | ブリンク ベース
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TEL 03-3401-2835
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