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kearny デザイナー熊谷富士喜氏インタビュー 「kearnyの10年間とその先の話」

2023年3月10日(金)から始まりました、「kearny 10th anniversary pop up 」の開催にあたりまして、kearnyのデザイナー熊谷富士喜さんに、改めてkearnyと熊谷さんご自身の10年間とその先のお話を伺ってきました。

田代:まず、kearny10周年おめでとうございます。今回はその10周年のアニバーサーリーのポップアップイベントを開催するということで、改めてデザイナーの熊谷さんにkearnyの10年間や熊谷さんご自身のことなどをお話しをお伺いできたらと思います。

熊谷:宜しくお願いします。

田代:まず何故今回インタビューをしようと思った理由なのですが、ブリンクベースがイメージするkearnyって熊谷さんご自身の考えやイメージが強く投影されているブランドという認識がありまして、ということはkearnyの10年間の様々な変化は、熊谷さんご自身の変化や影響を表していると言っても過言ではないかと思いまして、取材させていただこうと思いました。

熊谷さん自身が実感する自分の変化
田代:まず最初にkearnyを10年間続けてきた中での、熊谷さんの変化についてお聞きしたいと思います。例えばですけど、もしkearnyをやってきた熊谷さんと、やってこなかった熊谷さんっておそらく今と違う人物になっていると思うのですが、kearnyをやってきたことでご自身が変化したことはありますか?

熊谷:僕自身良くも悪くも、仕事とプライベートが分かれていない人間なので、プライベートでも眼鏡を考えていますし、仕事としても眼鏡を考えているので、そういった面では特にずっと変わらないですが、kearnyをやっていることで変化したことで言うと、日本への興味みたいなところは変わりましたね。

熊谷:kearnyを始めた10年前頃は、あんまり日本に興味が向かなかったんです。若かったというのもありますし、古着の買い付けもやっていたのでインポートするのに興味があったんですよね。なので最初の3年間は海外に行ってラフ画を描いて、それを日本に持って帰ってきて綺麗にデザインし直して作っていたんです。

熊谷:そこから3年目以降は日本にいながら考えることがほとんどでしたね。日本の文化だったり、物作りだったりとか、色んなところに目を向けるようになったし、日本の良さみたいなものを、海外に何度も行ったから客観してみることができたように思いますね。あとはkearnyを始めてから色んな都道府県でお取り扱いをしてもらったことがきっかけで、その土地に行って、その土地の料理をいただいたり、歴史を感じたり、調べたりすることができたので、10年間で日本の色々な土地に行かせていただいたという経験は、kearnyをやっていなかったら、全くではないですけど、ここまで日本の良さを感じさせてもらうことはなかったかもしれないですね。

田代:最初の3年は海外でデザインを考えて、それ以降は日本で考えるようになったきっかけはあったんですか?

熊谷:アメリカに行っていた時に、愛犬が亡くなってしまったんですよね。すごくショックで、もし自分が海外に行っていなかったら、とか色々考えてしまったんです。誰のせいというわけではないのですが、日本を離れるということに色々なリスクがあると責任を感じてしまって。理由はそれだけではないのですが、そこから海外に行く長期の出張を意識的に減らすことになりましたね。

熊谷:その頃に、「海外に行かないでデザインをすることをやったことが無いな」と思って、古本屋で見つけたライト兄弟の本を読んで、そこからインスピレーションを受けたモデルが「wilbur」「orville」「milton」「susan」を出して、そこから日本で考えたデザインが始まりましたね。

田代:そのきっかけを通して、日本への興味や面白みなどの感じ方は変わりましたか?

熊谷:まるで変わりましたね。その後すぐに民藝に興味を持って、それをテーマに眼鏡を作ってみたりとか、訪れた場所の山の形をそのまま眼鏡にしたりとか、ほとんどが日本から得たもので作っていましたね。

田代:ブリンクベースで取り扱うようになってからのkearnyのテーマは本当に毎回驚かされた記憶しかないですね、そんなところから眼鏡のインスピレーションを?!みたいなことが。

熊谷:テーマ毎回変わりますよね、多少気分屋なので笑

田代:でも、その熊谷さんが今何に興味があるんだろうか、みたいなことがテーマになっていたりするので、毎回それが楽しみでもありますね。まるで映画監督が新作を出すように、今回はどんなストーリーなんだろう、、とか。もちろん眼鏡のデザインも楽しみにしていますけど、それに付随するストーリーはkearnyの魅力でもあるので、店頭でkearnyを紹介をした場合も、お客さまはとても興味津々に聞いてくださることも多くて、接客をしていても楽しいですね。

始めた頃と今で眼鏡に対する変化
田代:眼鏡に対して、始めた頃はこう思っていたけど、今はこう思っているとか、そういった対眼鏡での変化はあったりしますか?

熊谷:始めた頃は右も左も分からない状態で、デザイン学校も出てないですし、眼鏡の学校も出てないですし、まず「どうやったら眼鏡って作れるんだろう」という状態からやれる範囲でとりあえず2型を形にするところから始めたので、眼鏡が一つ出来上がるまでににどれだけの人が関わっているのかとか、最初はそこまで見えてなかったんですよね。

田代:今では想像もつきませんが、熊谷さんにも最初にはそういうことがあったということなんですね。

熊谷:そうですね、ただ今では生地屋さんやパーツ屋さん、レンズ屋さんまで、それぞれ色々とお伺いして、どういう方々がkearnyに携わってくれているのか、そういうこともこの10年間で知ることができて、買ってくださる方や販売員さんもそうですが、フレームを作ってくださる方なども含めた皆様のおかげで、ここまでやってこられましたという感謝の気持ちが膨れ上がっていますね。

田代:kearnyは熊谷さんあってのブランドではありますが、その裏側には多くの人たちの力があって成り立っていて、驕らずに感謝の気持ちや尊敬心など大切にしているところなどは、熊谷さんからいつも感じています。

10年間で特に記憶に残っている瞬間
田代:熊谷さん自身がkearnyの10年間を振り返って、特に記憶に残っている瞬間などはありますか?例えば、この展示会とか、イベントとか、これをデザインした時とか、パッと思い浮かぶシーンがありましたら。

熊谷:いっぱいありますね!

田代:もちろんそうですよね!というのも、当たり前なことですが、熊谷さん自身がkearnyというブランドに対して一番思い入れがあると思うんです。その熊谷さんが記憶に残っている瞬間をぜひお聞きしたいです。

熊谷:そうですね、ちょっと有名な方の名前をお借りするという感じで捉えられてしまうかもしれないですけど、仲良いバンドがいまして、そのバンドが小さいステージから大きいステージに上がっていくのを見てきたんですけど、そういうのを見ていく中で、kearnyの眼鏡をかけてくれたことは嬉しいなと毎回思いましたね。また別のミュージシャンが初の武道館をやった時なのですが、ミュージシャンとしての初の武道館って夢があるじゃないですか、その時にkearnyをかけて出てくれて、それに気づいた時にはとても嬉しくて涙が出ました。もちろん街で知らない人がkearnyをかけていた時とかもありがたく思って、そういう時も幸せを感じますけど、誰かが夢を叶える瞬間に立ち会えるというのは嬉しいですよね。

田代:濃いですね、その瞬間は誰でも経験できることではないですよね。まさに熊谷さんにとっても、kearnyにとっても糧になる瞬間ですね。

熊谷:本当にありがたいですね。

この先10年の話

田代:この先10年、なので20周年目までの目標やイメージがもしありましたら、お伺いしたいです。

熊谷:実はね、まだあんまりないんですよね、、笑

熊谷:すごい計画的にやってきたわけでもなく、その日暮らしというか。ただ「好き」っていう感じでやってきた10年だったので、これからも変に意識しない方がいいと思っています。ただやりたいことや作りたいものは沢山ありますね。

田代:そうなんですね。

熊谷:この10年間でも、コロナ禍みたいに、みんなが変わらなくてはいけない状況もありましたし、そんなことは予測もしていなったので、この先何があるかは分からないですよね。ただこの先も眼鏡が作れればいいなとは思っています。原材料が届かないとかもこの10年でありましたし、作れなくなる時もいつかあるのかなと考えさせられましたね。

田代:特にセルロイドという素材はそうですよね。

熊谷:やっぱ工場さんとか職人さんを大切にするには、一本でも多く作ったり、販売しないといけないですし、そのような意識は今後も常に持ちつつやっていきたいなと思いますね。作る人がいなくなったら作れないですからね。

田代:その熊谷さんの意識はkearnyを続ける指針みたいなことでもありますね。

熊谷:あともう一つ目標ありました!

熊谷:ここ最近では、acekearnyというブランドを始めたりとか、gravelというオリジナルアセテートを使ったコレクションをやってみたりとか、これからは海外も視野に入れていきたいなとは思っています。

熊谷:セルロイドはヨーロッパやアメリカでは販売できなかったので、acekearnyやgravelなどを通してより多くの人にkearnyをかけてもらえたら嬉しいですし、そういった海外への動きは過去10年間ではできなかったことなので、やっていきたいと思いますね。

田代:ついにkearnyが世界に動き出していくということですね。また眼鏡のデザインをするのにも色々と熊谷さんにも影響を与えてくれそうですね。10周年を超えて、改めて海外に行ってみると。

熊谷:自分の足で訪れた情景とかが目に入ってきて、デザインに落とし込めるところとかは大きいので、だから自分はデスクに向き合うというよりは、外に出ていろんなものを感じた方が良い人間なんだと思いますし、kearnyにおいて「日本」っていうのが長かったんですけど、これからの10年はもう少し海外に目を向けたいと思います。

田代:楽しみにしております。kearny第2章ですね。

〈kearny 10th anniversary pop up〉

開催期間:2023年3月10日(金)〜3月26日(日)

開催店舗:blincvase

営業時間:12:00-20:00

定休日:月曜日