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北欧デザインから見る、OSCAR MAGNUSONのデザイン

ブリンクベースで2020年春から取り扱いを再開しました、スウェーデン発のアイウェアブランド「OSCAR MAGNUSON | オスカー マグヌソン」が新作や定番モデルが多数入荷いたしました。お客様のみならず、社内スタッフにも評価の高いOSCAR MAGNUSONは言わずもがな、「北欧らしさ」というようなものを漠然と感じていましたが、それが具体的にフレームデザインのどこを指しているのかを言語化できずにいました。さらによく考えてみれば、そもそも「北欧らしさ」とは具体的にどういうことなのだろうかということを疑問に思っていました。

近年日本でも、例えばIKEA(イケア)などを筆頭とした「北欧インテリア」や「北欧デザイン」など、一般的な一つのジャンルになっているほど確立したデザインカテゴリを携えています。つまり北欧のデザインを紐解くことで、OSCAR MAGNUSONのデザインを北欧・スウェーデンたらしめる理由が見つかるかもしれないと考え、本記事では北欧、特にスウェーデンデザインの歴史から見る、OSCAR MAGNUSONのデザインについて掘り下げてみます。

まず最初に北欧とは、字の如く欧州の北に位置し、スカンディナヴィア半島にある北ヨーロッパとも呼ばれる地域です。デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーとそこから西に位置する島国アイスランドの合わせて5カ国を「北欧」と定義されています(諸説有り)。北欧というと水産業や林業、石油・ガス産業など恵まれた自然を想像させる一方、ITや医薬品、機械工業なども盛んで、幅広く多岐に渡る産業にて北欧諸国は繁栄をしてきました。ではスウェーデンにおいて「北欧デザイン」という意識がいつから芽生えたのでしょうか?

スウェーデンにおける北欧デザインの萌芽
それは遡ること18世紀から19世紀にかけて起こった「産業革命」がきっかけと言われてます。北欧の産業革命は周りのイギリスやフランス、ドイツと比べると遅れてやってきました。産業革命は多くの人々にとって、それまでの生活で使用していた日用品を工業生産化することで気軽に安く、そして便利な物が手入れられたり、国民の生活に豊かさを与えました。

しかしスウェーデンでは、大量生産された日用品は生産技術が安定しないまま製品化され、粗悪な品質の物が溢れてしまいますが、生活の近代化を望む国民は、伝統的な手工芸品よりも工業生産品を生活に取り入れる状況になってしまいました。そのような状況に対し、民族的な手工芸の技術保護を目的として、1845年にスウェーデン手工芸協会が発足しました。ただしスウェーデン手工芸協会は産業革命による工業生産品を国から排除するのではなく、今まで作られてきた伝統的な手工芸による日用品や家具を見直し、どのように工業生産化するかということを重視しました。

工業生産技術により、今まで手工芸で出来なかったものを生産することができるにもかかわらず、あえて手工芸品をベースとして工業生産化するというデザインを保護する特異な経緯そのものが、スウェーデン独自のデザインに化けるきっかけなった可能性の一つとも考えられます。

北欧のモダニズムについて
その後北欧諸国では、協会や企業を通じて地道に活動をし、労働者に貧富の格差が生まれにくいようにモダニズムが浸透しようとした結果、効率的には広まらなかったため、生活の基本である衣食住の「食環境」から改善しモダニズムを促進し、スウェーデンではグスタフスベリ、フィンランドではアラビアなど食環境の「食器」の部分を通じてモダニズムを広めました。

その中で諸外国から北欧の食器が評価されたのは、量産は簡素で合理的に行うにもかかわらず、デザイン、製作は自由に行うことで独自のモダニズムのバランスをとり、そして1925年のパリ博では、イギリス人ジャーナリストにより高い評価を受け、「スウェディッシュ・グレース」と評されるまでになりました。

しかし1930年のストックホルム博では、急速に進む機械化による、諸外国のデザインの進化を意識した建築家や評論家からは、スウェーデンは時代の潮流となるデザインからは外れ始め、評価されなくなってしまいました。しかしスウェーデンは1919年に『より美しい、日用品』を出版し大きな反響を得た人物グレゴール・ポールソンにより「機能するものは美しい」をスローガンに、機能主義という考えを強く唱え、見た目というよりは、あくまで人の生活を基軸にしたデザインを展開しました。そのムーブメントはイベントが終わった後も、マスメディアや一般大衆を巻き込み、デザインについて熱く議論をされ続けた結果、1930年のストックホルム博にて突発的に広まった機能主義的なデザインの流れがイベント時のみで終わることがなく、その後70年代にポストモダニズムが出てくるまで、スウェーデン国内のみならず各国にてモダニズムが支持されました。

スウェーデンらしいデザインとは
前述のことから考えると、スウェーデンのデザインの根底には共存・中立性というものが揺るがぬように存在しているように思えます。例えばそれは手工業と機械工業や企業とデザイナー、そして機能とデザインなど。その中立性そのものが、どこに振れることもなく中性的なデザインを生み出していると考えました。

またその中立性というのは、使用する環境や年代においても言えることだと思います。それは元々あるものを排除せずに共存をするような性格やのため、ユーザーがどのような環境下でも年代でも、そのもの自体が機能するようことがスウェーデンデザインの哲学のように考えられます。

OSCAR MAGNUSONのデザイン
実際にOSCAR MAGNUSONのフレームデザインを見ても、眼鏡のデザインとして大きく逸脱をしない中にも、自由さにより生まれた中立性を感じられるデザインとなっています。一見ベーシックでシンプルな要素も感じつつも、アートとも言えるユニークさも感じさせてくれます。さらにそこにはバイオアセテートを採用することによる物理的なサスティナブルのみではなく、ユーザーが長く使えるデザインとしてという意味での精神的サスティナブルなデザイン要素が含まれており、「ここのデザインがこうなっているから、ここの国っぽい」とかではなく、デザインを描き始める時点でのデザインに対する思想の違いが、フレームデザイン全体からスウェーデンらしさというものを生み出しているのだと思います。

加えてオスカーマグヌソン本人のインタビューでも、彼はこう言っています。

「私は工業デザイナーというバックグラウンドがあります。フレームを正しく作るための技術的な問題やメガネのデザインにおける複雑な問題を解決すること、その次にクリエイティブさを持つことで、ようやく自分自身を表現することに夢中になれます。」

眼鏡は、フロントのデザイン、テンプルのデザイン、のようにパーツ毎にデザインが見られることが多い傾向にあります。しかしOSCAR MAGNUSONのデザインは、パーツ毎のデザインではなく、言い方によってはパーツという概念も薄く、フレームが一つのプロダクトとして佇む時にようやくデザインとして機能するデザインと言えるのでしょう。

OSCAR MAGNUSON | オスカー マグヌソン
PRODUCT NAME : Batty
COLOR : Deep Ink
PRICE : ¥49,500(w/tax)

OSCAR MAGNUSON | オスカー マグヌソン
PRODUCT NAME : Bobbi
COLOR : Deep Ink
PRICE : ¥49,500(w/tax)

OSCAR MAGNUSON | オスカー マグヌソン
PRODUCT NAME : Deckard
COLOR : Deep Ink
PRICE : ¥49,500(w/tax)

text:Junichi Tashiro

参考文献:株式会社誠文堂新光社 『プロダクト、建築、テキスタイル、名作をつくった人と時代とアイデンティティ「北欧デザイン」の考え方』著:渡部千春

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