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Vol.17 2014.6.5

Ikuya enomoto 榎本 郁也 / Kengo Osawa 大澤 健吾

今回の『Megane GENTS & 美女』は、ブリンク・ベースで今夏より展開予定の新ブランド「IKUYA ENOMOTO(イクヤ エノモト)」のデザイナー榎本 郁也さんとその制作を手掛ける老舗鼈甲メーカー「大澤鼈甲株式会社」代表である大澤 健吾さんを迎え、今回のプロジェクトについてインタビューさせて頂きました。

デザイナーの榎本さんは、国内はもとより海外のフレームデザインも手掛けた経験をもつ実力派デザイナーです。 そして、「IKUYA ENOMOTO」の生産を請け負うのが、日本で最も有名な鼈甲メーカーである大澤鼈甲。 至高のタッグにより生み出されたアイテムの全貌、その制作秘話をこのたび聞くことができました。

また普段ではなかなか目にする事が出来ない大澤鼈甲の工房も、特別に撮影させて頂きましたので、ぜひともご覧ください。 必見の内容となっております。

 

*今回のロケは、文京区千駄木にある大澤鼈甲(http://www.osawabekko.co.jp/)で撮影させて頂きました。

<編集者>
「本日はよろしくお願いいたします。 まず、はじめにこの企画が始まった経緯を教えて頂けますか?」


<榎本さん>
「大澤鼈甲さんは、業界では誰もが知る最も有名な老舗の鼈甲屋さんです。 はじめて大澤さんにお会いしたのは、前の会社に勤めている時でした。
その後、会社を辞めてフリーのデザイナーとして活動を始めたときに、再び大澤さんのところにお邪魔する機会がありまして。

その時にバッファローホーンフレームを見せて頂いたのをきっかけに、このプロジェクトがスタートしました」


<大澤さん>
「たしか、、あの時にご覧頂いたのは鼈甲とバッファローを繋いで作った試作的な物でしたね。
榎本さんにお会いした時から素晴らしいデザイナーだと存じ上げていたので、フリーになられたのを機にデザインのお仕事をお願いするようになりました。

三年前からバッファローホーンを使用したフレームの試作をはじめ、榎本さんとの再会をきっかけに、バッファローホーンという天然素材の面白さがさらに増していった次第です。 鼈甲より価格をおさえられるのも魅力でしたし」

<編集者>
「なるほど! そのような経緯で始まり、満を持して発表されたというわけですね」

<榎本さん>
「若い世代にも天然素材の掛け心地をぜひとも知ってほしい、そんな思いが強くあります。 形容し難いのですが、安心する掛け心地を実感できるんですよね。 とはいえ価格の問題もありますし、若い世代の方は天然素材のフレームをあまりかけないのが現状ですので… 鼈甲はもちろん、良いのは分かっています。
しかし、最初のステップとして、価格を少しおさえたバッファローホーンでしたら、掛けてもらえるのではないかと考えたのです。
また、それと同時に日本の職人が持つ高い技術を知ってほしくて、最も信頼できる大澤さんにお願いたしました」

<大澤さん>
「他のメーカーさんもバッファローの取り扱いはあるのですよね。 私達も素材には興味がありました。 職人の性分から素材の追求をしてみたいという思いもありましたから」

<編集者>
「鼈甲とバッファローホーンは同じ天然素材ですが、性質の違いなどはあるのですか?」

<大澤さん>
「天然素材という部分での共通点はありますが、鼈甲よりバッファローホーンの方がより硬さを感じます。 又、生物部材としての元々の形状の違いが製作の工程に顕著に現れます」

<編集者>
「どのように変わるのですか?」

<大澤さん>
「鼈甲は各パーツごとに作り、それを合わせて綺麗な一つのフレームに仕上げていきます。 鼈甲の制作作業では、その各パーツを精密に作ることが非常に大変な作業になります。 バッファローホーンは、パーツごとではなく、一枚のバッファローホーンのシートを枠の型に切り出してつくるので、制作する手間が鼈甲とかなり変わってきます」

<榎本さん>
「もちろん素材の価格が違います。あわせて生産における工程が違いますから、それは製品の上代に反映されますよね。 欧米ではバッファローは眼鏡の素材としてもポピュラーですしね」

<編集者>
「大澤さんへ質問ですが、伝統工芸品として東京都から認定をうける江戸鼈甲をみなさんに今後どのように伝えていきたいと考えていらっしゃいますか?」

<大澤さん>
「物作りは長く続けていく末に伝統工芸品として認められるようになります。 今まで培ってきた技術や知識を受け継ぎ、皆様に知って頂くことはもちろん大切ですが、伝統工芸品として長く続けるには、“変わり続けること”という意識を持つことが、非常に大事だと思います。
時代、世代にあった物をつくることも視野に入れるべきだと。 商売としては、当たり前のことなのかもしれませんけどね(笑)。
最近の例では、鼈甲フレームでは珍しい横長のモダンなフレームを榎本さんとご相談しながら作り、グッドデザイン賞を受賞することができました。
とはいえ喜んでばかりいられないのですが、鼈甲の産業は材料の供給の問題と常に直面しています。 そこをなんとか解決し、この産業を後世に繋げていくのが課題ですね。 現在、鼈甲協会で供給の問題を解決できるような計画が進んでいます」

<編集者>
「お二人は、なぜこの道に進まれたのか教えて頂けますか?」

<大澤さん>
「僕は、父の後を継ぐかたちで、いつの間にか今の仕事をしていました。 自分で決定したとうよりも何も疑いがなく今の道に進んだ感じです(笑)」

<編集者>
「榎本さんはどうだったですか?」

<榎本さん>
「もともとは車のデザイナー志望で、美術大学に進学しました。 在学中はインダストリアルデザインとクラフトデザインを専攻したのですが、あるときサングラスに興味を持ってしまい、就職活動の時はアイウェアデザインをできる会社を中心に探しましたね。
幸いアイウェアメーカーに就職し、眼鏡産業について一から学び、二年前にフリーのデザイナーとして独立して、今に至ります」

<編集者>
「榎本さんはフリーになられて、今後していきたことは具体的に何かございますか?」

<榎本さん>
「国内の眼鏡の産地と言えば真っ先に福井県といえますが、個人的には東京産の眼鏡を作ってみたいです。 あとはオーガニックな素材と眼鏡を結びつけていきたいと考えています。 至難の技だとは思いますが、 町のパン屋さんのように生産から販売まで一貫して出来るストアができたらいいですね。 地産地消の眼鏡というか。昔の職人さんのように個人が目の届く範囲で行うスタイルに憧れます」

<編集者>
「最後にお二人から今回のプロジェクトでユーザーの方に伝えたい事を教えて頂けますか?」

<大澤さん>
「通常、鼈甲フレームは50代以上の方にご使用頂くことが多く、前述のグッドデザイン賞をとったモダンなフレームも40代以上の方がほとんどです。 ですので、バッファローホーンフレームは、30代の方にもご使用頂き、私達が手作りでつくるフレームの掛け心地と天然素材の質感を肌で感じて頂けると嬉しいです。 そして、ゆくゆくは鼈甲フレームにも興味をもって頂けると嬉しいですね(笑)」

<榎本さん>
「この企画では、素材を活かすようなデザインを心がけています。 素材が本来もつ質感を高い技術を培った職人が仕上げることで美しいアイテムに仕上がります。 そして、アイウェアデザインの最先端の現場にいるデザイナーが、職人と協業することで生まれたプロダクトの面白さも、既存の鼈甲などの天然素材フレームのイメージと違って、新鮮に感じて頂けると思いますので、ぜひ手にとってご覧いただけると幸いです」

<編集者>
「本日は、お忙しい中、誠に有り難うございました」


この度、取材させて頂き、お二人から物を作り出す楽しさと厳しさを改めて教えていただしました。 また物を作ることに真摯に向き合っていることも実感しました。

大量に物を作れる現代だからこそ、職人の手により細部に至るまで丁寧に作られる物には、貴重であるという言葉以上に作り手の“深い思い”が込められているように思います。

以下に、今回の企画で制作されたバファローホーンのフレームと大澤鼈甲さんの鼈甲フレームを制作する作業と工房の風景を掲載いたしましたので、是非ご覧ください。

IKUYA ENOMOTO /GH01 今夏発表予定 価格未定

「鼈甲やバッファローホーンといったナチュラルな素材を伝統的な製法で確かな造形を持つフレームに作り上げることは、眼鏡フレームの中に新しい美しさを発見し、ハンドメイドプロダクトを復興していくことだと考えています」 と榎本さんは語ってくれました。

大澤鼈甲さんの工房の作業風景。 職人達が、机の上で鼈甲と向かい合いながら制作しています。


<プロフィール>

Kengo Osawa / 大澤 健吾
1963年東京都生まれ、大澤鼈甲代表取締役。東京都より東京都青年優秀技能賞(1994年)、東京都伝統工芸品産業後継者知事賞(1997年)、東京都中小企業団体中央会会長賞(2012年)を授与される。
また、近年、通常の鼈甲フレームに加え、モダンでスタイリッシュなデザインを基調としたKUAIシリーズを発表し、眼鏡の国際展示会 IOFTのラグジュアリー部門グランプリ(2010年)、著名な日本のデザイン賞であるグッドデザイン賞(2013年)を獲得するなど、精力的に活動を行っている。 <大澤鼈甲  URL  http://www.osawabekko.co.jp/

Ikuya Enomoto /  榎本 郁也
1975年東京都生まれ、IKUYA ENOMOTO デザイナー。武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科卒後、眼鏡メーカー シャルマンに入社。
東京デザイン室勤務を経てイタリアのミラノデザイン室にてファッションブランドの商品企画デザインを担当。 帰国後に独立してアイウェアデザインスタジオONLYGOODFORMS設立(2012年)。現在、東京を中心に眼鏡ブランドのデザインを多数手掛ける。
<ONLYGOODFORMS : tel 03-6312-9716  mail  ie.onlygoodforms@gmail.com >

Enomoto , Osawaスタイリング写真

[ スタイリング ]

アイウェア :
IKUYA ENOMOTO(left)
アイウェア :
OSAWA BEKKO (right)

Enomoto , Osawa
榎本 郁也 / 大澤 健吾

Ikuya Enomoto(デザイナー)-left
Kengo Osawa(大澤鼈甲代表)-right

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