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思わず掛けたくなる親密感、kearnyの眼鏡づくりとは? 後編

職人の手によって削られるセルロイド製の眼鏡を筆頭に、洋服とバランスよくコーディネートできる眼鏡として、ブリンクではリピーターの多い日本ブランド kearny|カーニー。デザイナーの熊谷富士喜さんは、眼鏡と服と音楽を愛し、祐天寺で古着ショップも経営しています。インタビューの後編は、セルロイド眼鏡の魅力について。

荒岡:kearny|カーニーといえば、何気ないデザインが魅力です。

熊谷:紹介する3モデルは、シンプルにしたかったので、飾りやブランドロゴなどが見えないようにしました。どこの眼鏡をかけているか分からないくらいがいいなと。

 

kearny | カーニー
PRODUCT NAME: Wellington
COLOR:clear yellow, clear gray, clear
PRICE: 32,400yen(w/tax)

熊谷:これは、初期の頃から作っているモデルで、単純に自分が欲しいものを形にしました。まだモデル名をつけていなかった頃ですが、やがて、つけるようになります。

 

kearny | カーニー
PRODUCT NAME: coit
COLOR: clear gray
PRICE: 32,400yen(w/tax)

熊谷:『coit』はモデル名をつけた最初の眼鏡です。サンフランシスコのkearny streetの坂の上にあるcoit towerでデザインを考えたのでこうつけました。coit towerは、街を一望できる展望台です。

kearny | カーニー
PRODUCT NAME: grant
COLOR: clear brown, black×brown
PRICE: 32,400yen(w/tax)

熊谷:kearny streetの一本裏にあるgrant streetからモデル名をとりました。この通りには、70年代にレザーアイテムの工房兼ショップが並んでいたそうです。いまでもその名残があってジュエリーの工房兼ショップを見かけますね。

荒岡:kearnyのメガネはどれもテンプル(つる)に芯が入ってないんですよね。

熊谷:芯がないテンプルがより美しく見えるように、できるだけクリアな生地を選びました。

荒岡:kearny|カーニーのセル眼鏡は、一般的に使われているアセテート素材ではなく、セルロイドを使っています。セルロイドは、アセテートとは成分の違うプラスチック。昔は眼鏡以外にもよく使われていました。衝撃に強くコシがあるぶん加工が大変で、眼鏡業界では、職人がひとつひとつ磨くことが多いです。その工程で、中から含有物が出てくることもあって、職人泣かせの生地だというお話を、前回伺いましたね。

熊谷:うちは、そういう含有物があるものも受け取るようにしています。これは、海外での経験のおかげなんですけど、海外の方はそういうハプニングを「ラッキーだ」と捉えるのが普通というか。むしろ「世界にひとつしかないもの」と考える。日本人はなかなかそうはいきませんね。B品、不良品と見なされてしまう。

荒岡:日本の眼鏡業界は、検品の基準も高いですからね。間違ったものを個性ととらえるというのは、なかなか難しい。

熊谷:僕は自分でお店もやっているので、お店で販売する時には、そういうラッキーな商品を前向きに展開していきたいと思っています。せっかく職人が技術を駆使して作ったものなので、簡単に不良品とは言いたくない。きちんと説明しながら手渡すことができれば、世界にひとつの眼鏡を届けることができますからね。

荒岡:人の手がきちんと関わって作っている証でもありますからね。昔、ニューヨークのSelima Optique | セリマ オプティークで修業したことがありますが、当時セリマではまだフレームを手で削って製作していたので、同じモデルでも大きさが違ったりしましたよ。僕は日本人だから、検品でそれを指摘する。すると「人間が作ってるんだから仕方ない」と。そういう価値観もあるんだと知って勉強になりましたね。

熊谷:個体差があると、どの子を連れて行こうかと選ぶときの楽しみも増す。このお店にもある陶芸作品を選ぶみたいな感じで眼鏡を選ぶのも、この場所でならいいかなと思っています。人の手ですべてを作るような眼鏡もいつかやってみたいですね。

荒岡:熊谷さんは、眼鏡以外のいろいろなことに興味をお持ちですよね。洋服、音楽、コーヒー、カメラ、釣り、それらのすべてが眼鏡の仕事に繋がってるような気がして。仕事と趣味の境がないというか。

熊谷:そうですね。興味が全部仕事に繋がる、そう思っています。

荒岡:最近はまっているものは?

熊谷:夜釣りですね。いまは、スズキとクロダイがいい時期なので、けっこうな頻度で行っています。魚をじっと待つ時間が、ひとりで考え事をするのにいいんです。

荒岡:眼鏡と釣り、かけ離れているように見えますが……。

熊谷:そうでもないかな。たとえば、ヴィンテージの眼鏡の買い付けは、釣りに似ているんです。自分で釣れるポイント、つまり眼鏡のありそうな地域を探して、自分の知識を使って釣り上げる。それに対して、眼鏡づくりは農業に似ています。土から耕してゼロから作る。僕はどちらも同じくらい好きですね。二兎を追うのはよくないといいますけど、僕はどちらもやりたい。さらにお店もやりたい。眼鏡だけやっていたら、僕の眼鏡は面白くなくなっちゃうんじゃないかと思います。

荒岡:kearny|カーニーのコレクションは、ファッションの流行にもほどよくリンクしていますよね。

熊谷:洋服が好きだからこそ提案できる眼鏡というのがあると思います。ヴィンテージ眼鏡にインスピレーションを受けていますが、そのままま作ると当時の人に戻るだけ。コスプレになってしまうので、そこをどのようにズラしたらいまの時代に掛けやすくなるのかというのは常に考えていますね。最初にお話したように、学生の頃入った眼鏡店で、洋服を見ずに顔との相性だけですすめられたことがあまり嬉しくなかったという経験が大きいかもしれません。欧米仕様のデザインを日本人の顔の幅や鼻の高さに合うよう調整するのは大前提ですが、眉幅をひろくする、ブリッジをあげるといった微調整は、ファッションの気分や時代感に連動していると思います。

荒岡:流行は意識しますか?

熊谷:ファッションの目線で作るというのがブランドのコンセプトなんですが、流行にずばっと落とし込みすぎるのは違うかなと思いますね。最低限意識しながら、もうすこし不細工にしたり、エロくしたり、デザインしながらいろいろと挑戦しています。

荒岡:熊谷さんが、ある時うちの店にいろいろなブランドが並んでいるのを見て「僕の眼鏡、ふつうだな」って言ったのが印象的でした。たしかに奇をてらっているデザインではないんですけど、kearny|カーニーはふと手にとってしまう眼鏡というか。リピーターの人が増えているのを見て、生活にすっと入っていく眼鏡なのかなと。

熊谷:ふつうにするって、度胸がいるんじゃないですかね。眼鏡は歴史があるので、新しいことをやったと思っても、絶対、過去の何かには似てしまう。それに、いまは情報がたくさんあって、何をやっても似ていると言われてしまう時代でもある。だったら、そう言われることは気にせずに、ふつうをやりつくそうと。白い無地のTシャツの小さな違いをどうやったら人に説明できるのか、感じてもらえるのか、というような気持ちで取り組んでいます。

荒岡:熊谷さん、生き方もストレートでいいですね。野球でいえば、直球のみ。その潔さもものに出ていると思います。

熊谷:野球もやってたんですよ。体育会一家でしたから……。

荒岡:そうでしたね。今日はありがとうございました。

ブリンク ベースでは、kearny|カーニーの新作を取り扱っています。ぜひ店頭でお試しください。

 

Text & Edit Saiko Ena

 

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2019-03-06 | Posted in BLOG, INTERVIEW | タグ:  

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