対談 | Barbour 崎野将吾さん × blinc 矢澤直人(前編)  

INTERVIEWSAVILE ROW

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ブリンクウェブサイトに新連載がスタート。ブリンク男性スタッフが、さまざまな業界でこだわりの商品を展開する目利きを訪ね、ものへの視点をひもときます。アイウェアは、ファッションであると同時に精密なプロダクトです。また、世界中のどこにでもあり長い歴史をもっています。ものづくりの視点から眼鏡やサングラスをとらえ、他分野のプロダクトと比較してみると面白いことが見えてくるんです。

初回は、イギリスの由緒あるブランド、Barbour|バブアーの正規代理店SUPREMEで副部長を務める崎野将吾さん。バブアーと同時代に生まれたイギリスの眼鏡をご紹介しながら、バブアー渋谷店にてお話をうかがいました。

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矢澤:いつもお店に来てくださってありがとうございます。今日掛けていらっしゃるのは、カトラー アンド グロスですね。

崎野:はい、これもブリンクで。矢澤さんがいま着ているバブアーはクラシックですか?

矢澤:そうなんです。すみません、僕のは古着です。崎野さんが着ているモデル、かっこいいですね。

崎野:これはロンドンのサヴィル・ロウにある「ノートン&ソンズ」というテーラーとコラボレートしたモデルなんです。過去に2シーズンだけコラボしたものなので、もう販売はしていないんですが、ドレープ感など含めてスタイルが定番のものとは全く違います。バブアーのファーストライン、ビーコンは、その時代を象徴するようなブランドとコラボレートして、時代を刻んでいく試みを積極的にしているんです。

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矢澤:長い歴史と知名度がある中でも、そういった革新的な試みを怠らないのは、素晴らしいですね。

崎野:バブアーの創業は1894年。120年の歴史があります。
もともとは、サウスシールズというイングランドの港湾都市で生まれたファクトリーブランドで、港湾の労働者や漁師たちのために、オイルを施した防水性の高いアウターを作ったのがブランド発祥のきっかけでした。
二度の大戦では、防水性と耐久性の高さからイギリス海軍に使用されました。
そして戦後は、インターナショナルというラインができてライダースジャケットを展開するんです。二代目にあたる人物がバイク乗りだったようで、バイク用のつなぎを出したんですね。
当時のバイクの主流は、UK。ライダースといえば、UK生まれのバブアー。バイクレースでは、9割が黄色いロゴの入ったバブアーのこのモデルを着ていたらしいですよ。そんな中、60年代になって、東ドイツで行われた“International Six Days Trial”というレースでスティーブ・マックイーンが着て注目されました。これを機に、ミック・ジャガーなどロックミュージシャンが着るようになって、ファッションとして大ブレイクしたんです。それまでは、生活に密着したいわば衣料品でした。

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矢澤:いま定番として人気のモデル、ビデイルは、いつ頃できたんですか?

崎野:70年代に入ってからです。矢澤さんが着ているモデルですね。実は乗馬用なんですよ。サイドポケット、サイドベンツ、アームウォーマーがついていて、内側の下部は、ナイロン素材の泥よけになっています。

矢澤:これそういう機能だったんですか!

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崎野:そう、実に機能的。バブアーは、機能美の服なんです。いまは、アウトドアメーカーからハイテク素材など機能性のあるものがたくさん出ていますが、当時はナイロン素材自体が珍しかった。部分的に使う事で機能性を高めていたんですね。
70年代において、バブアーは、最新テクノロジーのファブリックとデザイン性を兼ね備えたプロダクトだったんです。ビデイルが乗馬用だったことは、バブアーが王室に認められるきっかけにもなりました。
乗馬をたしなむエリザベス女王が、ビデイルを気に入ってロイヤルワラント(王室御用達の認定証)を授けてくれたんです。現在、バブアーは、エリザベス、ウェールズ、エディンバラと3つのワラントを持っています。
現在は3つですが、かつては故・ダイアナ妃のものを含めて4つワラントを授与できた時代があったそうです。ロイヤルワラントを3つ持っている会社は、イギリス国内で13社しかないんです。とても光栄なことです。

矢澤:ビデイルのあとも変化があったんですか?

崎野:ビューフォートという狩猟用のコートが、80年代半ばから後半に発売されました。少し丈が長めで、獲物やピストルの玉をいれるシークレットポケットがあるなど、形は同じですが、ディテールに凝っています。その後に展開したのが、ボーダーといってさらに丈が長い散歩用のもの。これは、エリザベス女王が非常に愛されたモデルです。

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矢澤:日本では80年代に流行って、いままた再ブレイクしていますね。

崎野:80年代後半にイタリアで爆発的に流行ったんです。スーツの上にバブアーを着る。当時、日本人男性のファッションの興味はイタリアに向いていたので、日本でも大流行しました。いま若い人にも受け入れられているというのは、ものがあふれている中でいいものとは何かということに意識が向いているからだと思います。
スタンダードなもの、本物がいいという方々が選んでくれるんでしょう。本物はやはり、イギリスにありますから。他分野でもそうだと思いますが、ファッションでも、ものづくりの原点はイギリスです。イタリアは、その下請けのファクトリーを持つ国だった。フランスは、オートクチュールを展開し特にレディスが目立って行った。メンズファッションといえば、ブリティッシュです。
ブリティッシュプロダクトの服は、型紙を見ると曲線、テイラーの作り方です。一方、カジュアルな服を作ったのが、アメリカ。アメリカの服の型紙はまっすぐで平面的で、カーハート、リーバイズみたいな実用服が多かったんです。

矢澤:それでいうと、眼鏡も全く同じです。眼鏡の歴史は、1300年代にイタリアで生まれたベネチアンガラスによるレンズにまで遡っちゃうんですが……。ガラスを文字にあてたらよく見えたということから、当時は老眼鏡の役目を担ったらしいです。つまり最初にレンズが発達した。そのレンズを使いこなすのに、枠、つまりフレームが欲しいということで派生していったんですが、テンプルという耳に掛けるツルのあるプロダクトが生まれたのが、やはり、イギリスなんですよ。20世紀に入るちょっと前、1890年あたりです。

崎野:まさにバブアーと同時代ですね。ちょうど、工業が発達してきた時代なんですよね。その後の発展も似ているはずですよ。イギリスで作っていたものの生産が追いつかないので、イタリアにファクトリーができて、イタリアの会社はその中で技術を習得して大きくなって行った。

矢澤:そうなんですよ。眼鏡でも、イタリアはファクトリーです。イタリアブランドのペルソールなどは、技術を吸収したあとに第二次世界大戦で空軍のためのサングラスを作った。それで知名度があがったんです。眼鏡は、軍ものや飛行機乗りとの関わりで発達していったところがあります。それに、もともとは医療補助器具ですからね。

崎野:ウエリントンやボストンの眼鏡がアメリカで生まれたのは、多人種の国で誰にでも似合う眼鏡がそれだったということらしいですね。量産のカーハートやリーバイスに通ずるところがあったんでしょうね。当時は、あういう眼鏡がいっぱいあったんですよね。

矢澤:そういう中で、正統派眼鏡というとやはりイギリスですね。

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SAVILE ROW|サヴィル ロウ
PRODUCT NAME: OSRC2
COLOR: Silver Shiny
PRICE: 39,960 yen (w /tax)

崎野:眼鏡にも王室に受けいれられたものがあるんですか?

矢澤:残念ながら、バブアーのようにロイヤルワラントはないですが、王室御用達というブランドがありますよ。サヴィル ロウです。サヴィル ロウは、NHS(National Health Service)というイギリスの国営医療サービス事業から国民に配布された眼鏡がもとになっています。当時それを製造していたアルガワークスという工房が、いまも東ロンドンにあって、サヴィル ロウは、現在そこで作られています。アルガワークスは、80年代にアメリカのアメリカンオプチカルに買収されたときに、サヴィル ロウという名でリブランディングされたんですが、その後、イギリスの代表的な眼鏡を他国に持って行かれてはならないと自国の資産家が買いもどし、再び、英国ブランドとなったんです。

—イギリスのプロダクトこそ原点。ふたりが英国正統派プロダクトにひかれる理由とは?続きは、次回をお楽しみに。

 

Photos:Toru Kometani Text&Edit:Saiko Ena

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